ダイレクトボックス(Direct lnjection Box、DI)とは、電子楽器などの出力を直接ミキシング・コンソールに接続するために用いるインピーダンス変換器であり、楽器を収音する際、マイクロフォンとは違い、本体に装備される「ライン出力」から、空気を介さずに直接音声信号を収録するときに使用する装置である。
インピーダンス変換と不平衡→平衡信号への変換、低インピーダンスヘの変換、バランス出力への変換がその目的。フォーンプラグベースの出力端子でもあるフォーンプラグはアンバランス出力。キーボードなどもライン出力なので、ダイレクトボックスを用いる。
信号出力がアンバランス式であったり、高いインピーダンスを持つ場合、どちらの条件でも接続のケーブルを長く延長すると音質の変化や劣化、またノイズを引き込みやすい性質を持っている。
ベースはPAにおける音の制御の要となる低音をクリアに取り込むため、また電子楽器は楽器としての最終出力がライン(電気信号)の形式となるため、ベースやキーボードなどの電子楽器に多用される。
エフェクターではないため基本機能として音色の変化はないように設計されているが、実際には回路素子の特性から音色が変化する。
これらの接続にダイレクトボックスを用いるのは、低いインピーダンスヘの変換とバランス回路への変換が目的である。一般的にこうした楽器群が持つ信号出力の形態はほとんどの場合アンバランス式で構成されており、特にベースはエレクトリック型ピックアップ、アコースティック用コンダクトピックアップ、どちらもその発音構造から高いインピーダンスを持っている。ステージからミキサーまでは通常50m程度、大きな会場の場合は100mに届く場合も多い。さらにミキサーの電気的特性のしくみからも楽器を直接ミキサーに接続するには適さないため、楽器側の至近でこうしたインターフェースを用いて長距離伝送できるよう、またミキサーでの最適な受取りにマッチングさせる。
ダイレクトボックスの構造タイプ
ダイレクトボックスの構造タイプとしては、古くから用いられ、内部にトランスを内蔵して電源を必要としないパッシブ型、あるいは電子回路を組み込んだアクティブ型の2つの種類がある。アクティブ型であっても電源は内蔵バッテリーから供給、もしくはミキサーに装備され、コンデンサー型マイクに使用するファンタム電源による駆動に対応しており、別に電源を用意することなくコンパクトに使える構造を持つものが大半である。
パッシブ型とアクティブ型のメリットとデメリット
パッシブ型とアクティブ型では双方ともにメリットとデメリットとがあり、必要に応じて使い分けがなされている。いずれにしても使用の際、音の質感に変化を起こさず、音源そのままの状態を保持できる性能を持つ機器が理想的。広く一般に広く使われているダイレクトボックスが、アクティブ型ではカントリーマン(COUNTRYMAN)のType85やBSSのAR-133など。パッシブ型ではジェンセン(JENSEN)社のトランスを内蔵するモデルも著名。しかしながら、トランスは良質なものであれば、音質に独自ともいえるキャラクターを加え、それが音楽にマッチした場合は好まれることも多いが、デバイスとしての構造上、高いインピーダンスを受けきれない性質があり、使用については楽器によりある程度の条件付き制限がある。