インシュレーター(insulator)
インシュレーターはケーブルと並んでアクサセリーの王様といわれる。早くから各種のものが開発され、そうしたノウハウはボードやラックにまで生かされることとなった。ボードとの大きな違いは、同じようにコンポを支え振動処理を行うものでも、ボードは床などに敷くものであり、関わりが間接的なのに対し、インシュレーターは、コンポの「足がわり」をしてより直接的にはたらきかけることにある。インシュレーターはサイズ的に小さく、四個または三個ワンセットでその機能を発揮する。広い面全体でコンポを受け止めるボードとは異なり、インシュレーターは原則的に小面積での接触か、点接触に近い。インシュレーター(insulator)は、構造が1ピースか、または素材の組み合わせや形を選ぶことで微妙な音作りを楽しむことが可能。
インシュレーターは、素材も形状もさまざまだが、耐荷重の面からも硬さが必要となる。ゴム系の柔らかいものやスプリングのものもかつては多くあったが、金属や木材、カーボン、樹脂など、ある程度の硬度をもち、円筒形や鋭く先が尖ったスパイク形状に加工できることが求められる点からも、インシュレーターは金属が主力なのは分かるだろう。ゴムはその点でもこうした用途のインシュレーター向きとはいえないが、使うなら薄くしたスペーサー(間隔をあけて2部品を結合するときに、間にはさむ輪状の小片)などだろう。
インシュレーターとしては真ちゅう(黄銅)やアルミ、最近ではマグネシウムやチタンなどハイテク系マテリアルの活躍が目立っている。
インシュレーターの構造分類
さてインシュレーターは、実際の製品では1ピースと2ヒース構造のものとに大別できる。シンプルで使いやすいのは、素材を円筒やコーン(円錐)、ブロック状に加工した1ピースタイプだ。ただし鋭いスパイク形状の場合、下を傷つけないようにカップ(受け皿)を別に用意したい。
その二つを最初からセットで設計したのが、より高級な2ヒースタイプ。スパイクとカップとで役目を分け、より精度良くインシュレーション(絶縁処理)ができるため、主流となりつつある。迷走する振動の流れをピンポイントで絞ることにより、効果が高まる。例えばプレーヤー内で発生する複雑な機械振動は、脚部を経て一度床に当たり、そこから反射してプレーヤー側に戻る。このルートをオス・メスのカップルで断ち切ることができれば、音のにじみやにごりが消え、本来の瑞々しいサウンドがよみがえる。
インシュレーターのもうひとつの大事なテーマは異種混合である。例えば、オス・メスとも同じアルミだったとすると、固有の共振ピークが揃って好ましくなく、片方を真ちゅうにするなどして、共振点をずらすという対策である。
TAOC(タオック)のTITE-35Sは、2種のハイカーボン鋳鉄を用い、サウンド的にも絶妙なバランスを得ている。
また、タイプの違う素材を組み込んだり貼りつけるなどして、固有の色づけをキャンセルする手法も一般的。GOLDMUND(ゴールドムンド)のMMCarbonBase(ステンレスとカーボン)、ISOCLEAN POWER(アイソクリーンパワー)のISOTIP(テフロンと超高硬度鋼材)などが好例で、これはオーディオの定番技術。インシュレーターにはより積極的に音のチューンをする役割も大きい。音をシメたり、和らげてほぐれる響きにしたりしてくれる効果がある。
一部のインシュレーターは、コンポの脚と交換して使う専用タイプのような製品もある。通常はコンポの底部で受けるのか、また脚の下に敷くかである。効果としては前者がよいが、その場合も四点支持か三点かで微妙に音調が違ってくる。スペーサーと組み合わせてもよいだろう。