ケーブル素材と特徴について。ケーブルに起こる様々な現象を回避するために行われてきた各要素の工夫について見ていこう。
まず導体であるが、純度、結晶構造の側面から考えることができる。
純度について 金属には通常不純物が含まれており、その純度はパーセントで表され、通常は99.999…という数値になる。「9」の数で純度を表すので、「nine」頭文字から何Nという表示をする。7Nであれば9が7つ=99.99999%の純度=0.00001%が不純物となる。
一般的な銅線は4N(99.99%)程度で通常は6Nまで。
一般的には純度が高いと結晶構造の乱れがなく、それだけ信号の通りがよいとされる。
結晶構造について銅は結晶を持っており、主にその結晶同士の隙間に不純物が存在する。とすれば、結晶を大きくするか、結晶そのものをなくしてしまえば、理論上隙間をがなくなっていくことになる。日立電線開発の線形結晶無酸素銅(Linear Crystal Oxygen-Free Copper、LC-OFC)、古河電工の一方向性結晶無酸素銅線(Pure Copper Ohno Continuous Casting、PCOCC)として実現され、これらは現在でも生産され使用されている。
現在では、線材を混合して使用する試みが一般化しており、各々の特徴を組み合わせることにより音調を安定させることができる。酸化防止のため、銅線を基材とし、スズや銀などでコーティングした線材も多い。スズは酸化防止の目的が強いが、銀コート線は、表皮効果に関係する。表皮効果によって高域信号は導体表面を通る
ので、そこに銀をコーティングすると高域特性を改善することができる。
リッツ線
OFCとともに比較的早い時期から使われてきたものに、リッツ線がある。
リッツ線とは素線一本一本を個別に絶縁したものである。
表皮効果による高域の劣化は、線が太くなることから生じるが、素線を細くすれば、互いに接触するので同じことになる。そこで、素線一本を個別に絶縁し、分離させた。
しかし同時に線間容量が増加するという問題も生じる。
一般的な芯線は、複数の素線を撚った撚り線構造である。しかし撚り線にはそれなりの問題が生じるが、単線を使用する例も少なくない。線径0.数mmの比較的太めの線を使い、これを絶縁体で被覆して一本の芯線とする。表皮効果が問題にならない範囲で太さを設定しておけば、撚り線に比べて密度が高まり、伝送特性も向上するように思える。それ以外にも単線の利点を強調する理屈も存在するが、実際に確認されていないことに留意しておく必要がある。
多芯構造とよばれる二芯ケーブルのひとつの芯線を複数にし、プラス側/マイナス側でそれぞれ数芯を持つものもある。各々が絶縁されており、ひとつずつの芯線と数える。導体断面積を効果的に増大させることができるので、リッツ線の効果を拡大したものと考えてよい。
絶縁素材
現在最も優れた絶縁素材としては、テフロンが知られている。比誘電率が石油系素材の中では最も低い。ポリプロピレンや
ポリエチレンもよいだろう。最も手軽なPVC(塩化ビニール)は比誘電率が劣るだけでなく、周波数によってそれが変化するという不安定性もあるため、高級ケーブルに使われること は少ない。 絶縁性能として最も理想的なのは空気である。そこでテフロンやポリ プロピレン、ポリエチレンなどを発泡性の素材として加工する技術が開発されている。絶縁性能の優れた素材に空気を含ませることによって、さらに比誘電率を下げる目的である。なお、一部で使用されるゴアテックスは、テフロンに微細な亀裂を入れた構造で発 泡性ではないが、それと同様の働きを持つものとしてやはり高い絶縁性能が確認されている。
絶縁性能
絶縁性能は基本的に比誘電率で決まるといっていいが、絶縁材にはもうひとつ振動制御 という役割がある。副次的なものではあるが、これによっても音質は変化するので無視す ることはできない。 硬質な絶縁体でそれを抑えてしまうとかえって副作用が生じる。エラストマ ーなど特殊な弾性体で絶縁性能も持つ素材を被覆に使用することで、ある程度の弾性を持たせ、適度に振動を吸収して影響振動をコントロールするものもある。
プラグは真ちゅうベースが一般的だが、酸化防止と接触抵抗を低減のため、これに下地としてニッケルメッキをかけ、その上に金メッキを金メッキを施す。金メッキよりさらに耐久性が高いロジウムメッキのモデルもあり、金また内部の絶縁にテフロンを使用するものある。